診療紹介

前立腺肥大症とは

前立腺は膀胱の出口に尿道を取り囲むように存在する男性固有の臓器で、精液の一部となる液体を産生しています。通常はクルミ大の大きさで、ミカンの皮にあたる外腺、実にあたる内腺からなっています。50歳頃より前立腺の内線が肥大して、排尿にまつわる症状が出た場合を『前立腺肥大症』と呼びます。
前立腺が肥大する原因はよくわかっていませんが、加齢や性ホルモンが肥大に関与することは事実です。また我が国では食生活の欧米化に伴い前立腺肥大症が増加していると考えられています。

 

前立腺肥大症の症状

以下の7つの症状があります

  1. 排尿後にまだ尿が残っている感じがする:残尿感
  2. 尿の勢いがない:尿勢低下
  3. 尿が途中でとぎれる:尿線途絶
  4. トイレが近い:頻尿
  5. 夜中に何回もトイレに起きる:夜間頻尿
  6. 急に尿がしたくなり、もれそうで我慢できない:尿意切迫感
  7. おなかに力を入れないと尿が出ない:腹圧排尿

症状がひどくなると、常に膀胱に尿がいっぱいで、少しおなかに力を入れただけで尿が漏れてしまう「溢流性尿失禁」や、尿が全く出なくなる「尿閉」となり、腎臓の機能が悪化する危険性が出てきます。また便秘時やお酒を飲み過ぎたとき、風邪薬やぜんそくの薬を飲んだとき、などに排尿症状が悪化することがあります。

 

前立腺肥大症の診断

最近は痛みを伴わない検査が一般的です。

  1. 国際前立腺症状スコア(IPSS) 
  2. 排尿障害の程度を判断するアンケート形式の問診表でセルフチェックができます。上記7つの症状を点数化して合計点数で排尿状態を評価する方法です。0~7点が軽症、8~19点が中等症、20以上が重症 と考えるのが一般的です。

  3. 超音波検査
  4. 腹部超音波検査で前立腺の肥大の程度や残尿量などを検査します。

  5. PSA(前立腺特異抗原)
  6. 前立腺肥大症と前立腺癌が合併することがあり、採血で血中のPSAの値を調べて、前立腺癌を除外することが必要です。

  7. 尿流測定
  8. 計器の付いたトイレで実際に排尿していただき、尿流率、排尿量、排尿のパターンなどを評価します。

 

前立腺肥大症の治療

軽症の場合は、排尿を含めた日常生活指導やお薬の内服治療が適応となります。

前立腺肥大症の内服薬にはアルファ1ブロッカー、5アルファ還元酵素阻害薬、植物エキス製剤、漢方薬など多種の薬剤があります。薬によっては性機能に影響をおよぼすものもありますが、排尿と性機能双方を改善し男性更年期の生活の質を向上させる薬剤も出てきつつあります。排尿症状とその他の疾患、生活環境等を考え、医師と相談の上に適切な薬物治療を受けることをお勧めします。

 

薬物治療で排尿症状が改善しなかったり、多量の残尿、溢流性尿失禁、尿閉の見られる場合は、手術が必要になります。経尿道的前立腺切除術が一般的です。これは麻酔下で内視鏡を尿道から挿入し、カメラでモニターしながら肥大した前立腺の内腺を少しずつ高周波電気メスで切除する手術で、TUR-Pと呼ばれています。また最近は同様な内視鏡手術で、ホルミウム・ヤグレーザーを使用して前立腺内腺を核出するHoLEP(ホーレップ)があり、以前は開腹手術が必要であった大きな前立腺に対して行われています。